循環器病は、心臓病・脳卒中・高血圧に代表されるように、血液の流れ(循環)の異常が原因で起こる諸臓器の病気で、文明国のどの国でも非常に頻度の高いことが特徴です。
血液循環は生まれてから死ぬまで昼も夜も休むことがなく働いていますので、長く生きるほどこの系統に故障が起こりやすくなるわけです。
心臓は疲れやすく、血管がつまって血液が流れにくくなるために脳・心臓その他の臓器(下肢など)に故障が起こりやすくなります。
血管が破れて出血するのが脳出血、くも膜下出血、大動脈瘤破裂による大出血などです。これらは成人期以降の循環器病ですが、乳幼児や子供に多いのは生まれつきの色々なタイプの先天性心臓病です。
循環器病は、食事や生活環境(ライフスタイル)と密接な関係があります。
お酒やタバコ等の嗜好品、運動や労働条件、ストレスとも勿論関連があります。
ハワイの日系人の循環器病は、日本に住んでいる日本人よりもむしろアメリカ人に近いといわれています。このことは遺伝も勿論関連しますが、環境が非常に大事なことを物語っています。環境が大事ということは、それをコントロールすれば予防が可能ということです。
予防とならんで大事なことは、早期治療とリハビリテーションです。脳卒中や心臓病があっても社会復帰したり、家庭生活をしている人は非常にたくさんおられます。どうすれば早く社会復帰ができるか、また再発を防止できるかが重要な課題です。それらの研究とこれをサポートする社会のシステムが日本はまだ遅れております。
このように、循環器病の征圧は、日常の生活面から医療と福祉のすべての面に係わっています。人口の急速な高齢化が進むなかで、その取り組みは今後さらに一段と重要性を増すことは疑いを入れないところです。
現在でも循環器病には国民医療費のなかで最も高額な医療費が使われ、しかも近年の増加のスピードがとくに顕著です。
令和元(2019)年12月には、「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(脳卒中・循環器病対策基本法)」が施行され、国を挙げての循環器病対策の取り組みが進められています。